不正競争防止法により営業秘密として保護されるためには、(1)秘密管理性、(2)有用性、(3)非公知性の3つの要件を満たさなくてはならない。とりわけ注目すべき要件は「秘密管理性」であり、この点に関する企業の努力は大きな意味を持つ。具体的に、企業に望まれる営業秘密の管理水準はいかなるものであるべきかが問題となる。そこで、これまでの研究において、日本の裁判例を分析したところ、情報に接する者にとって秘密であることが認識可能であったか否かで判断する裁判例群があるほか(相対説)、近時、高度な絶対的な基準をとり、その一部を欠くだけで秘密管理性を否定する一連の裁判例(絶対説)がみられることが明らかになった。相対説、絶対説のいずれが妥当であろうか。この秘密管理性要件の問題については、日本ではまだ積極的な議論が行われていないため、本研究ではこの問題を考えるひとつの参考となる視座を提供しうる素材として、アメリカを中心とした諸外国の裁判例・学説の検討を行った。
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