「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」(通称:「マイナンバー法案」)が、平成23年2月14日に閣議決定された。本法案では、PIAの実施が「特定個人情報保護評価」として明記されている。PIAの実施は我が国においては初めての試みである。本研究の成果は当該評価制度の仕組みを検討するにあたって貢献し、本研究の目的である「行政情報システムへのプライバシー影響評価の適用」が、現実の制度として導入される結果となった。 本研究では、番号制度の導入とプライバシーの権利の保障をめぐる課題について、番号制導入の背景から安心できる制度構築のための検討事項、情報保護評価(PIA)の実施および第三者機関設置の必要性について検討を行った。 今年度は、PIAの実施に向けて、諸外国のPIA関連制度の比較法的考察を通じて、(1)実施に必要な制度、(2)PIAの実施組織(第三者機関)、(3)実施体制、(4)実施対象、(5)実施方法及び手続き、(6)実施手順について諸外国の先行例も精査しつつ、わが国における現実の実施に向けて解決しなければならない検討課題について研究した。 本研究における研究成果は、番号制導入にあたって解決しなければならない個人情報・プライバシー保護の問題を解決するための有効な手法として、今後、実際にPIAを実施するにあたってその意義は社会に広く認識・評価されるものと思料される。 今年度の研究の最終目標は、我が国の個人情報保護・プライバシー保護法制との整合性を確保した上でのPIA実施に必要な具体的指針案を提示することを目標としていたが、本研究代表者が委員として検討に携わった「内閣官房社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会」において、同法に基づいて設置される第三者機関である「個人番号情報保護委員会」が策定する指針として、「特定個人情報保護評価指針素案(中間整理)」が提示されている。
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