近年、先進諸国において、医療事故、医療紛争、医療過誤に関わる法制度についての議論、医療安全推進のための取組みが行われている。我が国でも例外ではなく、学界においても積極的に議論が行われ、国の政策としても産科医療補償制度が導入されるなど様々な取組みがはじめられている。 本研究の目的は、我が国の医療事故に関する法制度のあるべき姿を考察することにある。医療事故における被害者への救済について、医師と患者の信頼関係を壊さないより良い解決方法を検討し、医療事故の予防、再発防止に有益な制度を構築するための提案を行いたい。そのために、北欧の医療事故に関わる法制度を検討する。 「北欧における医療苦情補償制度に関する研究(平静19~20年:科学研究費補助金)において、北欧の医療事故補償制度は、医療に関わる苦情処理制度や医療者の懲戒制度と分離されていることが明らかになった。北欧における医療事故に関わる法制度を検討するためには、医療に関わる苦情処理制度や医療者の懲戒制度についても研究することが不可欠である。北欧では、(1)患者オンブズマン、(2)患者委員会、(3)HSAN、(4)社会庁など多元的な苦情処理制度が存在する。これらの制度は、医療事故の予防、再発防止に役立つよう制度設計されており、注目に値する。平成21年度は、北欧4カ国のうち、スウェーデンにおいて医療に関する苦情処理制度と懲戒制度について文献調査、大学や各種機関での実態調査を行った。スウェーデンでは、現在、医療における苦情申立制度や医療者の懲戒制度を改革が行われている。そのため、平成21年度の調査では、調査委員会報告書の作成者等への実態調査も行った。これらの研究成果については平成22年度に公表する予定である。
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