本研究は、弁護士の公益活動について、その理論的根拠および実践のあり方を検討することを目的としたものである。平成22年度は、基礎的な文献調査を基調とした平成21年度の研究活動を基礎とし、前年の研究成果の公表および日本と米国における公益活動の実際についての調査を予定していた。 まず、研究成果の公表については、5月に米国シカゴで行われたアメリカ法社会学会年次大会において、日本の弁護士の公益活動の枠組みと現状について報告した。平成16年に制定された弁護士の行為規範である弁護士職務基本規程第8条は、公益活動を実践する弁護士の義務を規定しており、現在幾つかの弁護士会において公益活動の義務化が会則として制定されている。東京3会に行った照会では、前年度の会員弁護士の公益活動の状況が明らかになった。学会報告では、これらの調査結果に批判的検討を加えたが、参会者からは新たな分析の視点や米国の状況についての紹介等、多くの示唆を得た。 平成22年度後期は、日本における公益活動の現状を知るため、何名かの弁護士にインタビューを行った。また、米国のプロボノ活動の状況について、大型弁護士事務所のプロボノ担当弁護士に状況を聞く機会を得、その後も継続的に情報の提供を受けている。 平成23年度は、これらの調査を基礎とした研究の公表を日本語・英語で行うことを目標とし、これに加えて、英国のプロボノ活動の状況について、ソリシタを対象とした調査を行いたいと考えている。また、日本と米国の状況についても継続的に調査を行い、さらに深い知見を得ることを目標とする。
|