本年度は、(1)戦前の日本主義者と親鸞思想の関係について、(2)近代日本の国家主義とアジア主義の関係について、(3)血盟団事件について、(4)近現代日本の保守思想について、の4点を中心に研究を進めた。(1)については倉田百三、三井甲之を中心に研究を進め、「倉田百三の煩悶」、「倉田百三の恋とファシズム」、「歌人・三井甲之と『同信の友』」、「蓑田胸喜と原理日本」、「転向と教誨」の5本の論文を執筆した。これらはいずれも季刊誌『考える人』における連載「親鸞と日本主義」として発表した。この連載は2011年度も継続される。(2)については、近代日本のアジア主義を通史的に捉えるために、西郷隆盛の征韓論から大東亜戦争までの流れを追う雑誌連載(「アジア主義を考える」『潮』)をスタートした。これも2011年度も継続される。(3)については史料収集・現地取材・インタビュー収録につとめた。特に血盟団員で5・15事件の際に西田税を狙撃した川崎長光へのインタビューを行い、記録を発表した(『文芸春秋』2010年9月号)。川崎が事件に関するインタビューを受けたのは初めてのことで、貴重な証言を得ることができた。研究成果については、2011年度に『血盟団事件』という著書を執筆する予定である。また、昭和維新運動と現代日本のアイデンティティ問題の比較として『秋葉原事件 加藤智大の軌跡』を執筆・出版した。(4)については『保守のヒント』という著書や「私の保守思想」という連載を執筆し、研究成果を公表した。
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