研究課題
本年度は、史料収集・インタビュー調査を行ってきた「血盟団事件」について、研究のまとめ作業を続けた。血盟団事件は1932年に起きたテロ事件で、約2ヵ月後の5・15事件の発生に繋がった。血盟団事件の首謀者は井上日召。彼は大陸浪人などを経て日蓮宗の僧侶となり、国家主義的かつスピリチュアルな説法で一部の若者に熱狂的に支持された。血盟団事件には、茨城県大洗の農村部に住む青年が多く参加した。井上準之助を暗殺した小沼正や団琢磨を暗殺した菱沼五郎は、共に大洗出身の若き青年だった。井上日召は、大洗の護国堂住職として活動する中、この地域の若者を集め、日蓮主義に基づく国家改造の必要性を訴えた。当時の農村社会は貧しく、大洗の青年の多くは現金収入を獲得するため、地元の学校を卒業後、東京の下層社会で労働者として働いていた。彼らはそこで社会の矛盾や人生の行き詰まりを経験し、精神的支柱となるものを探求していた。彼らは、東京での挫折を経て地元に帰り、井上日召の教えに感化されていった。また、井上日召に付き従った青年集団には、東京大学・京都大学を主とする学生グループが存在した。その中心人物は四元義隆。戦後政界のフィクサーとしても知られる人物である。調査では、四元と親密な関係にあった中曽根康弘元首相へのインタビューも行なった。以上のような調査に基づき、近日中に『血盟団事件』という書籍を文藝春秋社から出版する予定である。また、アジア主義に関する連載(「アジア主義を考える」)や、近代における親鸞主義者とナショナリズムの関係を追った連載(「親鸞と日本主義」)も完結させた。両連載も近日中に、書籍として刊行予定である。さらに、本研究の、スタート時から進めてきた橋川文三研究については、2011年12月に『橋川文三セレクション』(岩波現代文庫)を出版した。
すべて 2011
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潮
巻: 11月号 ページ: 270-281
巻: 9月号 ページ: 266-277
巻: 8月号 ページ: 320-331
巻: 7月号 ページ: 316-327
巻: 5月号 ページ: 324-335
巻: 4月号 ページ: 316-327
Changing Perceptions of Japan in South Asia in the New Asian Era : The State of Japanese Studies in India and Other SAARC Countries(Intemational Research Center for Japanese Studies (ed.))(Intemational Research Center for Japanese Studies)
ページ: 253-275
Beyond Victor's Justice? The Tokyo War Crimes Trial Revisited, Leiden/Boson(TANAKA, Yuki & MCCORMACK, Tim & SIMPSON, Gerry (eds.))(Martinus Nijhoff Publishers)
ページ: 127-144
考える人
巻: 春号 ページ: 220-227
巻: 6号 ページ: 316-327
巻: 夏号 ページ: 254-261
巻: 秋号 ページ: 254-261
巻: 10号 ページ: 268-279
巻: 冬号 ページ: 254-261