平成23年度の本研究の実績は以下の三つである。 第一に、ドイツでの現地調査を敢行し、ドイツ福祉国家が大きく転換していることを現場から探った点である。とりわけ、ドイツにおける主要福祉団体のうち、カトリックのカリタスについて、ボン支部で調査を行った。また、デュッセルドルフ大学の大学病院にて、医療保険縮減の影響が出ていないかどうか、出ているとしたらどのようなかたちなのかについて聞き取りを行った。こうした作業により、福祉団体の役割が変化しており、移民の社会統合に積極的に乗り出していること、その一方で、貧困者の医療にかかれないというこれまでは見られなかった問題が生じており、ドイツ福祉国家が基底から揺るがされていることが明らかになった。具体的な成果は未公表であるが、この調査を土台として論文の執筆に入っている。 第二に、戦後ドイツ福祉国家の発展について、より平明に解説した論文を仕上げたことである。具体的には、編著の分担執筆を二つ仕上げた。今年度ではないが、来年度そしてこれからの研究につながる作業であった。 第三に、これまでの研究成果を学会や研究会で報告したことである。4月にはドイツ現代史研究会で報告し、10月には日本政治学会で報告した。どちらも、これまでの研究内容、つまり現代ドイツの福祉国家がどのような特徴を持ち、どのように形成・発展・再編されているのかというテーマである。こうした作業により、本科研の成果をより多くの研究者に伝えることができたと考えている。
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