研究概要 |
「官僚制の効率性と民主性」といった古典的テーマに対し,(1)分析手法として,ゲーム理論と計量分析を導入しつつ,(2)分析視角として,選挙・投票行動研究との融合を図ることにより,経験的なデータに基づきながら両者の関係を解明し新たな知見を得ることが,この研究の目的である.第二年度に当たる平成22年度には,関連する研究についての整理を進めつつ,理論モデルの構築,計量分析のデータセットの整備を行うことを目標とした. 今年度の成果としては,官僚制の効率性の源泉となる官僚制の専門性について,各国比較を行っている種々のデータセットを収集し,整備した.これにより,民主制の程度を示す指標との関連を探る用意ができた.分析結果の公表には至っていないが,予備的分析を終え,23年度の日本比較政治学会にエントリーしており,そこで結果報告をすべく,執筆を進めている.非選出機関である官僚制は,それ故に直ちに非民主制をもたらすものではなく,政党制の特徴など政治家の側の組織化のありようなどと相互作用を生じた結果として,政治体制の民主化の程度に影響することがそこでは示されている.これまで計量データを用いた検討が進んでいない問題に対して,分析を進めていく一定の手がかりを得ることができたといえる. こうした進捗状況であるため,今年度中に雑誌論文として公表できることができたものは,計量分析の方法論的な検討を行ったものと,それを用いた国際比較の計量分析(ただしテーマは本研究から外れる),さらに本研究課題に関係の深い書籍について検討を加えたものが中心となっている.
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