本年度は、研究開始年度にあたるため、インタビュー調査を含めた基礎資料等、情報収集が中心となる。自治体構造改革の詳細と決定・実施に至るまでの資料・情報の収集(インタビューを含む)整理、及び各自治体データの収集・分析を行い、翌年度の現地調査対象自治体の選定及び予備調査を行った。具体的には、フィンランド自治体協会、タンペレ大学、ユヴァスキュラ大学、ヘルシンキ市、ヘルシンキ市都市研究所、環境省における、学識担当者および都市政策担当者へのインタビューを行った。また、予備調査として、トゥースニエミ自治体(中北部)ほか4自治体を訪問し、現状を把握した。 資料収集及び分析の結果、フィンランドの地方自治制度は、80年代末以降の分権化改革の結果、裁量権が増したものの、人口と資源の流出入により地域間格差が拡大していること、このような地域間格差の均衡を図る地域振興政策は、地域の主体性を重視する拠点開発型に移行しているおり、均衡は以前ほどの重要性を持たなくなっていること、しかし、その一方でEU補助金等の活用により、地方部に新たな資源注入ルートが出来上がっていることが明らかになった。ただし、全体的に見れば、国際競争力確保のための選択と集中型の地域開発の傾向はますます強くなっており、2007年以降メトロポリス政策が始まっている。こうした政策傾向は、国家のイノベーション戦略と連動していると考えられた。
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