研究課題
本研究は、2005年に開始したフィンランドの自治体構造改革に着目し、進行中の改革を詳細に分析しながら、決定から実施に至るまでの過程で展開された多様な利益の調整作業を体系的に整理し、一般化された理論の他国への適用可能性についても論考することにより、その意図と影響を分析・評価することを目的とした。当該自治体構造改革は、補助金を用いて自治体合併を誘導すると同時に、保健・福祉と教育の基礎サービスの提供単位となる圏域の人口規模を一定基準以上に確保することによって基礎サービスの供給基盤を確保しようとするものであった。改革の実施は各自治体の自発的判断にゆだねられた結果、自治体の人口規模は一定化せず、基礎サービス提供圏域の人口規模も例外を残すこととなり、自治体間の財政格差は広がったまま縮小していない。こうした状況の中で、20l1年に政権交代が行われた結果、新たな地方制度改革が推し進められようとしている。今年度の研究では、昨年度実施した広域自治体の実験を実施しているカイヌー地方における聞き取り調査の結果を分析・整理したところ、自治体及び住民の主体的・積極的取組はあまりみられなかった。また、特例的な分権や広域化に対する中央官僚の抵抗が強く、実質的な改革へは至らなかったといえる。一方、研究初年度に実施した首都振興策であるメトロポリス政策も、小規模な政策転換にとどまり、根本的な中央=地方関係の改革へは至らなかった。カイヌー行政実験及びメトロポリス政策の実施プロセスに共通する点として、自治体と市民の消極的な取り組み姿勢・参加、中央政府官僚の影響力の強さがあげられる。また、両改革を通じて政権を担当した中央党は、その支持基盤が地方部であり、地方部への均等な利益分配を求められたことも意思決定の過程で大きく影響したと考えられた。
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法政論叢
巻: 第48巻第2号 ページ: 101-114
Proceedings of 21st Asia-Pacific Social Work Conference Crossing Borders : Interdependent Living and Solidarity
ページ: 424-432