本研究は、領域性の再編が政党モデルに及ぼす影響を検証するため、ヨーロッパの地域的バラエティーを考慮した事例を対象に、政党をマルチレベルな構造からなる組織モデル(ナショナル・リージョナル・ローカル+ヨーロッパの各レベル)と捉え、各レベル間のバランスに起きている変化を考察する。このような分析を通じて、実際ヨーロッパの政党が経験している「マルチレベル化」(分権化)と集権化の相克する多面的な構造変容を理解することを目指す。このような考察は、ポスト・カルテル政党の新たな政党モデルについて示唆を与えるとともに、「領域性の多様性(varieties of territoriality)」論として政党構造の観点からヨーロッパ比較政治に新たな比較の視角を導入できると期待する。 計画4年目にあたる本年度は、過去3年度の準備作業に基づき修正した研究方針の下、補足の調査・インタビューを行うと同時に、理論枠組と具体的分析の検討を進めながら、最終成果のまとめを行った。①理論的枠組の構築としては、前年の予備的報告から浮上した実質的分析・理論的枠組を具体的化し、政治学関連、ヨーロッパ政治関連研究の消化、データ収集をさらに進め、論文の理論的枠組の構築を図った。②補足的実証調査としては、総選挙実施に併せて2月・3月にイタリアにおいて州レベルの政党関係者へのインタビューを実施して、マルチレベルな政党政治の変容について資料を集めた。④最終成果としては、イタリア政治史の概説に研究成果を反映して出版した他、25年度前半出版予定の論文集にトスカーナ州民主党を軸とした政党組織とマルチレベルな党組織ガバナンスを比較政治の観点から論じた分析を執筆した。さらに、25年6月のヨーロッパ研究評議会において、クライエンテリズムネットワークの重層性の観点に注目した論文を執筆し、研究発表を行う。
|