本研究は、政治任用の概念を国際比較分析で定義し、日本の政治任用の位置づけと公務員制度改革における論点を明らかにすることを目的とする。政治任用の概念整理のためには、政治任用の具体的な制度のみならず、法的根拠や政治条件の分析が必要となる。本年度は、最も多義的に政治任用を用いる米国に関する資料・文献調査および現地調査を実施した。また、日本と類似する英国の政治任用に関する資料・文献調査を実施し、研究成果の論文を公表した。 米国の現地調査を実施するにあたって、まず資料を通じて、ニクソン政権以降の政治任用の実態と、平成21年の政権交代による政権の移行期における手続きを調査し、現地調査での質問事項を明確化した。 現地調査では、政治学および行政学分野での政治任用研究者、連邦人事管理庁の実務者に対してインタビュー調査を実施した。具体的に明らかになった事項としては、米国の政治任用は一見した「自由さ」とは対照的に、詳細な手続き上の制約を受けており、必ずしも大統領の意のままにはならないこと、とりわけ、第三者機関の関与は形式的であるより実質的であること、政権移行期の手続きはわが国の二大政党制が参照する有意義な対象となること、がある。また、インタビュー調査対象者との議論を通じて、わが国の公務員制度改革に関する大きな示唆を得ることができた。調査の結果、米国の政治任用の概念は、議会や第三者機関による関与の軸、任命権者の軸という二つの軸による類型が可能であり、この点は、政治任用の研究における新たな知見として、平成22年度中に成果論文とする予定である。
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