本研究課題は、今日、わが国の行政や自治体で標準装備となりつつある政策評価・行政評価システムによって算出される行政活動の業績情報が、情報の受け手である市民にどのように受けとめられ、また業績情報に触れることにより政府や行政に対する認識にどのような影響を受けるのかについて検討を行うことを目的としている。今年度は3力年の研究期間の初年度のため、主に業績情報がもたらす市民への影響の視点からの政策・行政評価システムの理論的検討を中心に研究を実施した。近年のPerformance Management研究では業績情報の利用の仕方に注目が集まっており、情報をパートナー間の双方的な対話に活用しようとする動きがみられる。Donald Moynihan (2007)は業績情報を事業や予算の改善へ活かすというマネジメントへのInstrumental Useから、算出された情報を行政機関間、行政機関と市民の対話に用いるInteractive Dialogue Modelを提唱しているし、Wouter Van Dooren・Steven Van de Walleの研究(2008)では市民の業績情報に関する理解が政府・行政に対する認識や信頼に影響を与えることを指摘している。 そのほか2010年3月に実施した英国実態調査では、Audit CommissionによるCAA(Comprehensive Area Assessment)実施のインパクトの把握を試みた。これまでのCPAと異なり、CAAでは産出される情報を基に監察官と自治体、そしてパートナー機関との継続的な対話が重視されることになるが、CAAに対する自治体側の評価は、概ね好意的であったことが確認できた。
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