研究課題
本研究課題の最終的な目的は、これまで体系的に説明されてこなかった日本の選挙における「ブーム」を、有権者の政党に対する感情を通じて一般的なモデルで統一的に説明することであった。研究の最終年度に当たってはこの点に注力し、未だ学術誌に掲載は至っていないものの2本の英語による論文を執筆し、学会やシンポジウム等で成果報告を行った。明らかになったこととしては、第一に、有権者の雪崩を打つような政治参加と野党への投票は、有権者が与党に失望するだけではなく、野党に対して期待を抱いたときのみ起こる、ということである。これは従来の業績評価投票が与党への不満にのみ焦点を当てていたことや、従来の政党支持態度による説明が、近年ますます存在感を増す無党派の投票行動を上手く取り入れられなかったことを補うという点で意義をもつ。第二に、有権者が政党の主張の不確実性を評価する際、与党と野党とでは異なるメカニズムを有しているということ。具体的に、有権者は野党についてはその不確実性を肯定的に評価する一方、与党についてはその不確実性を否定的に評価するということである。上記の知見と総合し、現状を打破したい有権者は野党の不確実性を評価し、野党に対して期待を抱くようになるとのひとまずの結論を得た。これは、二大政党制下での「健全な」政権交代の条件、つまり野党が与党に対する不満の受け皿となるための条件を明らかにしたという点で意義をもつ。
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オバマ政権と過渡期のアメリカ社会:選挙、政党、制度、メディア、対外援助(吉野孝・前嶋和弘編著)
ページ: 3-29
選挙研究
巻: 27号(1) ページ: 101-119
Waseda University Global COE Program Global Institute for Asian Regional Integration Working Paper Series
巻: (学内審査有) ページ: 1-19
アジアを学ぶ:海外調査研究の手法(鴨川明子編著)(勁草書房)
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