前年度に続き文献・資料の収集に努めた。また、ICCOの統計データを収集しつつデータベースを作成していたが、この過程で、資料の入手困難という研究遂行に差し支える重大な問題に直面した。そこでこの問題を打開する方策を試みたものの、成功には至っていない。この想定外の困難に直面して研究の方向性の調整を迫られため、今年度は成果に乏しい年となった。なお、脆弱国家論・平和構築論の探求には、引き続き取り組んでいる。 昨年度同様に、学会や各種セミナー等に出席して、脆弱国家や平和構築のほか、内戦や資源の呪いに関する研究動向等を把握するとともに、国際経済論・国際関係論・国際開発論の研究者と情報交換・意見交換・ディスカッションを行なった。特に平和構築におけるSSRについては近年学界での研究が活発化しているので、これらの研究成果の吸収、とくに構図や問題点、今後の課題の把握に努めた。 今年度は以下のような成果となった。第一に、資源の呪いに関して近刊予定の分担執筆書の内容を、東京新世界経済研究会で報告した。第二に、この分担執筆書の内容について、編者からの指示をうけて加筆修正を行なった。第三に、開発研究の視角から、脆弱国家を素材として世界秩序を問う論文の執筆に着手した。この過程で、破綻国家/脆弱国家の各種ランキングや、ウプサラ大学平和紛争研究学部の武力紛争データセットv4-2010、さらにはグローニンゲン大学成長と発展センターの長期歴史統計の検討などを通じて、世界経済における脆弱国家の性質を解き明かす作業を進めた。
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