前年度の研究開始後ほどなくして、データベースの作成に必要な統計資料の入手が滞るという困難に直面した。この困難については本年度の秋に暫定的に解消したものの、ここに至るまで1年半近くの間、当初予定していた研究が妨げられたことになる。 このような状況に直面したため、既に前年度の途中に研究の方向性を調整しておいたが、本年度もこの調整後の方向性に即して研究を進めた。昨年度と同様に、文献・資料の収集に努めつつ、学会、研究会、各種セミナー等に出席することで、破綻国家・脆弱国家や平和構築のほか、内戦や資源の呪いに関する研究動向や論点等を把握するとともに、研究関心を共有する研究者との情報交換・意見交換・ディスカッションを行なった。 今年度は、以下のような具体的な成果を得た。第一に、前年度までに執筆してあった原稿2点の追加執筆と校正を行なったが、これらについてはいずれも本年度に図書(分担執筆)として刊行された。第二に、破綻国家・脆弱国家の状況から世界秩序とガバナンスをめぐる諸論点を問う論考を執筆した。この論考については、本年度に刊行された『平和研究』において、世に問うことができた。第三に、破綻国家・脆弱国家の多く存在するアフリカにおける経済的困難の解明の一端として、この地域における人口と食糧に注目し、現状の困難とその将来を展望する論文を執筆した。これについては『情況 第四期』において、世に問うことができた。上述した理由により、当初予定していた研究計画のようには進まなかったものの、研究成果という点ではまずまずの成果を得た。
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