今年度においては三カ国の比較研究を実施するにあたり、基礎的な資料・情報収集等を実施した。日本については、本年に出入国管理及び難民認定法が大幅に改正されたことからも、その状況について法務省入国管理局関係者より聴取した。次に、オーストラリアについては、オーストラリア国立図書館において関連の資料収集を行うとともに、移民省関係者より、経済不況後の、より選別的な技術移民政策のあり方、及び試験的導入が開始された南太平洋島嶼国からの農場労働者受け入れ政策のあり方について聴取を行った。韓国については、研究補助員を用いて、重要な政策文書である「外国人政策基本計画」の全訳を実施するとともに、基礎的な外国人関連の統計資料の入手等を実施した。 以上のことから得られた知見としては、まず、日本については、「移民受入」といった意味における大幅な政策変更はないものの、今後の「在留カード」発行等によって、その方向性次第では従来とは違った展開も可能となる「インフラ整備」が行われたことが確認できた。オーストラリアについては、これまで経済好況とともに「技術移民」の実質的審査基準を緩和してきた結果、経済不況に鑑みて、より選別的な方向での受け入れを進展させていこうとすることが確認できた。一方、それとは対極的に非熟練労働者の不足という状況の中での、特定国からの農場労働者の受け入れについては、送出国からの開発的観点も含めた新たな方向性が確認できたものの、実際の効果については今後の注視していく必要がある。さらに韓国については政府の強力な主導のもとで、特に「結婚移民」を中心とした社会統合支援体制が整備されつつあることが確認できた。
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