本研究は、冷戦後に焦点を定め、そこでフランス歴代政権が地中海地域に対していかなる外交理念・戦略・政策を形成・展開してきたのかを明らかにし、その多国間主義外交の理念・戦略の本質を解明することを目的としている。 そこで本年は、先ず基礎資料の収集に力点を置いて作業を行い、フランスの外交政策論に関する先行研究のサーベイに着手し、フランス話と英語の学術誌を中心とする内外の研究論文、及び1990年代半ば以降の外交に関わる主な政治家の演説や手記類の渉猟を進めた。 併せてインターネットで検索可能なフランス国家機関(大統領府、首相府、外務省、国民議会等)資料、及び関連するEU(欧州連合)の公文書の収集を進め、フランスの対地中海外交の特質を検討する準備作業を行った。 また政府資料の収集を行うとともに、日刊紙『ルモンド』や、『朝日新聞』『読売新聞』『日本経済新聞』等のデータベース検索も実施し、新聞報道ベースでの資料収集も進めた。 そして、フランスの研究協力者(パリ政治学院R・アット氏、西パリ・ナンテール大学G・フェラギュ氏ほか)との意見交換、並びに日本で入手困難な資料収集のために、フランスへの訪問調査を9月及び1月に実施した。 11月に日本EU学会研究大会において、「EUの対中東政策-予防外交の観点から」と題する研究報告を行ったが、このなかでフランス・サルコジ政権がイニシアチブを握っている地中海連合についても取り上げ、EUが進める対中東外交の枠組のなかでフランスがどのような地中海外交を進めているのかについて、予備的な考察を盛り込んだ成果を発表した。
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