本研究は、第二次世界大戦後、イギリスの公式帝国(植民地、保護領、信託統治領などイギリス政府の法的な管轄下に置かれた地域の総称)が急速に解体へと向かうなかで、コモンウェルス(英連邦)を通して行われた「帝国後」の新たな国際制度・規範の模索について歴史的に分析を行うもめである。特に、本研究では、イギリスの公式帝国の解体後に残された政治的混乱や貧困、(特に多人種が併存する地域での)人種差別などの深刻な問題を受けて、コモンウェルス諸国間で常設のコモンウェルス事務局の設立(1965年)やンシンガポール宣言(1971年)を通して、そうした様々な「帝国後」の課題に対処する試みがなされたことについて検討する。 3年間の研究計画の2年目にあたる平成22年度においては、基礎的な作業として、上記のテーマに関する二次文献や報告書・.パンフレットなどの収集・分析を進めるとともに、(1)カナダ国立公支書館(オタワ)、(2)ブリティッシュ・コロンビア大学図書館(バンクーバー)、(3)香港中央図書館において、各国政府や国際機関め未公刊の一次文書や公刊一次資料の閲覧・収集を行った。 それらの研究の部分的な成果については、「イギリス帝国と三つの「脱植民地化」-公式帝国・非公式帝国・コモンウェルス-」2010年度中部政治学会(名古屋大学法学部、2010年7月11日)において報告を行った。また、「「三つのサークル」のなかのイギリス」木畑洋一・秋田茂編著『近代イギリスの歴史-16世紀から現代まで-」ミネルヴァ書房、2011年3月、239-255頁の公刊も行い、研究成果を広く社会に発信した。
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