本年度は具体的な成果と、基礎的な研究の土台となる史料収集の両側面において、進展があった。前者においては、1970年代における国際秩序の変容を主題とした研究の成果を生むことができた。研究成果における論稿の第二の論稿は、1970年代における欧州共同体内部の議論を検討し、当時における欧州共同体の世界政治における位置づけがどのように認識されていたのかを明らかにした。具体的には、欧州共同体の政治的発展が、対外的には米ソに肩を並べるパワーとなりつつ、対内的には共同体の政治統合が進行することを意味し、そのような対外的・対内的発展が、冷戦という国際秩序そのものを変容させ、最終的には冷戦終焉につながることが意識されたことを明らかにした。このような分析の意義は、一般的に従来的な国際秩序の動揺が語られる1970年代の国際政治の変動が、どのような射程を持つものかを定めることに寄与するものである。このような解明は、冷戦だけに彩られない戦後国際政治史を再構築することにつながるものである。後者においては、1970年代における欧州各国の外交政策を未公刊史料から解明するため、フランスの国立文書館所蔵のヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領文書の史料収集をおこなった。これは、当該時代における欧州政治の中核となる同大統領の外交政策に関する貴重な資料であり、同文書の閲覧が今後の研究成果を生む基盤となると思われる。
|