研究課題
本研究は、幕末期に展開される欧米諸国との関係を、江戸時代を通じて維持された対朝鮮を軸とする日本の国際関係のうえに位置づけ、徳川幕府による外交の連続性を見出そうとするものであり、その連続性を体現する存在として、1778年から1859年までを生きた幕臣筒井政憲の生涯と仕事を考察の中心に据えてきた。本年度前半においてはとくに、筒井が大きな役割を果たした1857年の江戸城における米国総領事タウンセンド・ハリス迎接儀式を、1764年の宝暦度朝鮮通信使迎接儀式と比較する形で、史料に基づき詳細に検討した。第13代将軍家定によるハリスの迎接は、本研究以前から筆者の論文等で取り上げてきたものであるが、今回の分析により、幕末外交を担当した幕臣らの発想の中で、朝鮮通信使の先例が当然の基礎として生きていたことをきわめて具体的に実証しえたと考えている。また、報告者の今後の研究において、主に外交儀礼を軸としていく方向を導き出すに至った。年度後半には、筒井政憲自身の生涯にさらに踏み込み、関連史料の可能な限り網羅的な収集ないし所在確認にあたった。外交政策の面における筒井の業績や考え方の背景をより深く理解するために、むしろ外交上の仕事に直接関係していなかった時期の状況を把握することに注力したが、日本全国を対象に情報を集めた結果、とくに、東京都はもとより、埼玉県および岐阜県の公文書館にて、江戸町奉行時代の史料を多く発掘することができた。ここには業務面のみならず家族関係の情報も含まれ、これらによって、筒井という人物の像はきわめて立体的になったと言える。次頁記載の各項は基本的に上記前半の研究によるものであるが、今後、後半の成果を踏まえた論文、書籍の執筆を予定している。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)
The XIXth Congress of the International Comparative Literature Association "Expanding the Frontiers of Comparative Literature" Abstracts
巻: ただし掲載審査あり ページ: 48-48
出版ニュース
ページ: 38-38