本研究の目的および最終年度に基づき、課題である「東アジアの国際教育交流と公共空間形成」について、以下の研究および総括をおこなった。 近年、高等教育のグローバル化が進展している。東アジアにおける域内の留学生交流も増大し、大学間交流の拡大と様々な国際共同教育プログラムが開発されている。この中で東アジアは高等教育にかかわる協力枠組みを重層的に形成している。その行く先には東アジア共通のアイデンティティ形成、そして「東アジア共同体」への展望がある。その際の前提として高等教育協力が国家間の対立を抑制あるいは協調を促し、東アジアの国際関係に秩序形成に貢献するとされている。そこで、東アジア地域における高等教育のグローバリゼーションとその対抗軸としての国家および高等教育機関の動向を、「国際レジーム(International Regime)」形成という観点から分析を試みて、現状における東アジア地域の高等教育協力の構図を明確にした。その結果、グローバリゼーションの進展から形成されてきた「WTO/GATSレジーム」の東アジア地域への浸透が認められた。他方で、東アジア経済の一体化が進むなかで、「教員・学生の交流促進」と「質保証・評価」を軸とした高等教育協力の地域的枠組みが重層的に形成されていることを確認した。しかしながら、東アジア各国による利益調整や信条体系の相互作用によってレジーム形成への可能性を有するものの、これらの協力枠組みには明確な規範やルールの形成にまでは至っていないことも明らかとなった。
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