2009年度は、安全保障をめぐる中東域内の国家間関係調整メカニズムを検討する上で必要となる国家および非国家アクターの間の諸関係についての基本的な実態把握に重点を置いた。現地語(特にアラビア語)資料、報道資料等を分析し、情報を蓄積していくことによって、それらの諸関係を量的に計測しすることを試みた。 具体的には、以下の3つに集約される。 (1)中東諸国の外交関係の網羅的把握(2000年以降) 中東諸国で頻繁に行われている要人の往来と国際フォーラム(首脳会議等)について、報道資料とマスメディア(主に現地発行の新聞)の分析を通して時系列順に網羅的に把握した。 (2)中東諸国家間の関係密度の測定 (1)の作業を進めながら、アクター間の関係密度についての量的測定を試みた。通常、外交的に友好ではないとされる国家間どうしでも、首脳級の会談や会合を一定の頻度で行われていることが実証された。 (3)外交関係の分類・整理とデータベース作成 (1)(2)の作業をもとに、中東諸国の外交関係を「アジェンダagenda」(議題)、「アクター・レベルactor level」(首脳や外相といった立場)、「アクションaction」(その後の行動)の「3つのA」に従い、分類・整理を試みた。これは、無数の諸関係を何らかの法則性を有したメカニズムとして描き出すための準備作業であるため、さらなるデータの収集・蓄積と並行し、次年度も継続する。
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