研究課題
2010年度は、前年度から収集をしてきた情報をもとに、安全保障をめぐる中東域内の国家間関係調整メカニズムの分析を行った。具体的には、以下の2つに集約される(1)2つのアジェンダを事例とした中東諸国の外交関係パターンの析出前年度より作成してきたデータベースを活用し、(a)パレスチナ情勢をめぐる各国および非国家アクターの動き、(b)米国を中心とした域外のアクターの介入の2つを事例に、中東諸国の外交関係のパターンを析出した。とりわけ、レバノンにおける「国際法廷」および「ヒズブッラー武装解除」の2つの問題を軸に、域内・国際の両レベルのアクターが国内政治の動態とどのように連動しているか分析した。その成果は、第3回中東学会世界大会(バルセロナ)および第3回イスラーム地域研究国際会議(京都)の2つの国際会議で発表した。(2)安全保障をめぐる中東域内の国家間関係調整メカニズムのモデル化(1)を手がかりに、域内における危機の回避・縮小・沈静化のために、中東諸国がいかなる論理で行動し、いかなる傾向を有した外交を展開してきたのかを把握し、安全保障をめぐる関係調整のメカニズムのあり方を検討した。このメカニズムを単なる勢力均衡やパワーポリティクスの所産と見なすのではなく、アイデンティティや「中東諸国であること」の意味を織り込みながら分析した。各国および非国家アクターが織りなす外交については活発なものを確認できたが、そのインセンティブやパターンにアイデンティティがどれほど影響しているかについては、明確な結論を得ることができなかった。とはいえ、トルコやカタールのように中東の紛争や開発に積極的に関与する国家が現れている。両国は「中東と西洋諸国との橋渡し役」としての位置取りを強みとする外交の可能性を見せており、今後の中東域内の国際関係の動静を考える上で注目すべき存在であろう。
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http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/biladalsham/lebanon/hizbullah_tanzim.htm
Asahi中東マガジン(http://astand.asahi.com/magazine/middleeast/column/2011011800001.html)
巻: 20110118
Yusuke Murakami, Hiroyuki Yamamoto, Hiromi Komori (eds.), Enduring States : In the Face of Challenges from Within and Without. Kyoto : Kyoto University Press, 2011.
ページ: 84-98
季刊アラブ
巻: 第134号 ページ: 26-27
Asahi中東マガジン(http://astand.asahi.com/magazine/middleeast/column/2010112900001.html)
巻: 20101129
http://www.suechika-kota.net/