平成22年度は、安心供与(reassurance)のコミットメントの理論を用いて、威嚇型のコミットメントである「積極的安全保証」と約束型のコミットメントである「消極的安全保証」、いわゆる「非核兵器国の安全保証」を考察した。その成果として、「NPTの不平等性と『非核兵器国に対する安全の保証』の論理」という題目で、日本平和学会の『平和研究』に論文を公表した。同論文では、核拡散防止条約(NPT)の不平等性を緩和・解消するともの期待されている「非核兵器国の安全保証」が、逆説的にNPTの不平等化を維持・強化するだけでなく、むしろさらなる核拡散をもたらしうるとの指摘を行った。また、安心供与のコミットメントの理論をさらに深く検討するために、日米同盟を事例として、核の傘という威嚇型のコミットメントと、核の先制不使用という約束型のコミットメントがいかなる関係にあるのかについても検討を試みた。その成果は、日本政治学会(於:中京大学)にて、「核と日米安保-威嚇型から約束型へ」という題目で報告した。現在、同学会に提出したペーパーに加筆・修正を施して、論文の投稿を準備している状況にある。なお、核兵器の使用をめぐる倫理については、南山大学社会倫理研究所において、「核兵器の使用と倫理-ヒロシマとナガサキのリアリズム」と題して講演した。その講演内容は、南山大学社会倫理研究所編『人間・社会・未来-相繋がり生きる基盤を求めて-』(南山大学社会倫理研究所、2010年3月)に収められている。
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