当初の計画に概ね沿って、基礎文献調査を通じて研究動向の把握に努め、かつ史料調査を行った。具体的な活動内容は以下の通りである。 「反デタント派」の近況について把握するため、1990年代から現在に至る大西洋同盟の関与した軍事活動に関する基本文献への批判的再検討に着手した。また、「反デタント派」の源流を探るため、ニクソン政権期やフォード政権期の「反デタント派」の活動に関する研究動向を調査した。加えて、欧州における「反デタント派」の影響力を測定するため、一例としてメージャー政権期のイギリスにおける海外紛争への関与と強制力行使の在り方をめぐる諸論争に関する調査を行った。この時期の諸論争ではサッチャー前首相の周囲や労働党右派による積極的な強制力行使論の盛り上がりを見せており、「反デタント派」の復権と影響力拡大という状況を指摘することができた。 夏季には海外において史料調査を行った。主にアメリカの議会図書館を中心に1990年代における大西洋同盟諸国での強制力行使に関する論争状況とその帰結について調査した。 これら諸調査・研究の結果、現状において支配的な強制力行使観を形成する上で1990年代初頭における米欧諸国での論争が重要な役割を果たしていること、「反デタント派」の影響力もこれらの論争を通じて増大していたことが明らかになりつつある。次年度以降も史料調査と研究動向調査を継続して、「反デタント派」に関する検討をさらに深めることとしたい。
|