当初の計画に概ね沿って、基礎文献調査を通じて研究動向の把握に努め、かつ史料調査を行った。具体的な活動内容は以下の通りである。 文献調査に関しては、基礎研究の一環として1970年代のアメリカ外交政策の形成過程に関する最近の研究動向を把握することに努めた。主要なテーマは、1)デタント推進派の中心人物であるキッシンジャー国務長官に関する研究、2)ニクソン政権からフォード政権への移行期における政策変動、3)フォード政権期の外交政策研究、4)フォード政権からカーター政権への移行期における政策変動、5)カーター政権期の外交政策研究である。このうち、1)に関する研究動向に関しては単著書評論文としてまとめた。今後は、残りのテーマに関する検討を深めてゆくことにしたい。 史料調査に関しては、夏季に海外において史料調査を行った。主にアメリカの議会図書館とミシガン州のフォード大統領図書館にて調査を行った。議会図書館では、クリントン政権の安全保障担当大統領補佐官を務めたアンソニー・レーク文書を中心に、1990年代における大西洋同盟諸国での強制力行使に関する論争状況とその帰結について調査した。フォード大統領図書館では、政権内部でのデタントをめぐる政策論争に関する史料を調査した。 これら諸調査・研究の結果1970年代、1990年代初頭、そして最近における強制力行使に関する議論の類似性と歴史的連続性とが明らかになりつつある。その一つの特徴は、反デタント派とデタント推進派のせめぎ合いにある。次年度以降も史料調査と研究動向調査を継続して、反デタント派に関する検討をさらに深めることとしたい。
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