研究概要 |
本年度は、ゲーム的状況における不確実性下の意思決定下での情報の価値を分析した。応用的事例として、環境問題や投資に関わる不可逆的選択に注目した。情報の価値が不可逆的選択によってどのように変化し、社会的厚生に影響を与えるかを考察した。 不確実性下の意思決定問題で、不可逆的選択を伴う情報の価値の研究は、Arrow and Fisher(1974, QJE),Henry(1974, AER) Fisher and Hanemann(1987, JEEM)等によってなされている。彼らが示した情報の有無によりもたらされる利得の違いは、準オプション価値(AFHH価値)とよばれる。準オプション価値は、自然開発をすることでその自然を元に戻すのに多大なコストのかかる環境政策や、投資によって多大なサンクコストが生じる企業の意思決定問題などの不可逆的選択の基礎理論を与えている。 しかし、こうした一連の分析は全て単一個人の意思決定問題に特化しており、複数の主体が互いに利得に影響を与えるゲーム的状況での分析はなされていない。本年度の研究では、不可逆的選択を伴うゲーム的状況下での情報の価値を考察している。 分析の特徴として、ゲームのプレーヤーに加え、情報をコントロールできる社会的計画者を導入し、社会厚生の分析を行っていることがあげられる。この導入で、情報の持ち手(認識主体)が変わることによって社会厚生がどのように変化するかを分析することが可能になった。主要な結果として、社会的計画者がゲームのプレーヤーに完全な情報を提示するのではなく、部分的に情報を提示することで社会厚生が上昇する条件を示した。
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