研究概要 |
本研究の目的は人的資本蓄積に対する借入制約の,経済成長および格差への影響を理論的・実証的に明らかにし,それに対する適切な経済政策を考えることである.主に動学マクロ経済学の観点から,借入制約や経済成長を定式化し,理論的な結論を求めて実証的妥当性を検証することであった. 前年度までに貨幣を導入したモデルで政策(貨幣調達,所得税調達)効果を分析した.ここでは,複数均衡や均衡の非決定性など動学的な性質として興味深い結果が得られた.さらに,money-in-produotion functionという貨幣導入の定式化により,それまでcash-in-advanceモデルやtransaction costモデルでは得られなかった,インフレーションの悪影響について導くことができていたが,海外での2回の発表を経て,過去の文献との比較や経済学的インプリケーションに対する貴重なコメントを頂き,投稿論文として一応の完成を見た,具体的には,money-in-production functionという定式化が1960年代からその妥当性について議論されてきて,実証研究が1970年代から存在すること,本質的に生産要素であるはずの貨幣を増加させることがインフレーションを引き起こしかえって生産活動を阻害しているという興味深い帰結についての考察である. 今後は以上の結果を基に当初の目的である,借入制約の経済成長および格差への影響をと貨幣の使われ方との関係について考察をしていく.
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