本研究の目的は非2部のマッチング環境で機能するマッチングメカニズムの設計・提案である。このようなメカニズムを実装できれば、現実社会における多様な資源配分問題に応用ができる。しかし、非2部マッチング環境では、ほとんどの場合、完全に機能するメカニズムを得ることができない。そこで、本研究では近似的に機能する「新手法」のメカニズムの構築を目指す。そのために計算機でのシミュレーションと純粋理論的手法をインタラクティブに用いるのが本研究の特徴である。前年度においては、基礎的な洞察を得るための数値シミュレーションを行ったが、平成22年度はこの結果を踏まえ理論的究明を進めた。具体的には以下の通りである: 1.マッチング環境におけるある確率過程(myopic blocking dynamics)の吸収状態について、シミュレーション結果から前年度の時点で予想を得ていたが、この数学的証明に取組んだ。証明は現時点で未完成であるが、近いうちに発表できるであろう。 2.以前からの研究結果に改善を行った。この結果は旧来の手法の限界を示し、新手法のあり方に洞察を与えるものである。これはゲーム理論の専門誌International Journal of Game Theoryに小改訂の条件付で掲載が受理された。近日中に正式に受理される運びである。 3.望ましいメカニズムの利用可能性の判定に要する計算量について理論的な結果を得た。これは新手法の有効性を評価するのに有用な結果である。この結果は9月にドイツで開催された国際学会で口頭報告された。 なお、研究は研究協力者の協力のもとに行われた。特に田中章(北海道大学)からは前年度に引続き大きな協力を得た。
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