平成21年度に引き続き、国際公共財供給メカニズムへの不参加問題が、どのような条件の下で深刻となるのか、不参加問題解決のための制度設計を如何に行うべきか、について研究を進めた。各プレイヤーが、公共財の供給量に対して要求水準を持つ状況を考察し、Saijo-Yamato(1999)の公共財供給への自発的参加ゲームを分析した。結果は、次の通りである。 1)すべてのプレイヤーが公共財供給量に対する要求水準を唯一一つのみ持つ場合においては、自発的参加ゲームには複数の部分ゲーム完全均衡が存在し、様々な公共財供給量が均衡において実現する可能性があることが分かった。その中には、パレート効率的な公共財供給水準も非効率的な水準も含まれる。強完全均衡で想定するようなプレイヤー間の交渉過程を考察した場合、部分ゲーム完全均衡の中に、強完全均衡の想定する交渉に対して安定的なものが存在し、その均衡においては、効率的な公共財供給のみが実現する。 2)プレイヤーが複数の要求水準を持つ場合、効率的な公共財供給は、必ずしもゲームの部分ゲーム完全均衡で実現しないことが分かった。この場合には、プレイヤー間の交渉によって、効率的な公共財供給が実現することはない。 1)と2)の結果から、各プレイヤーが公共財の供給に対して要求水準を持つ状況においては、効率的な供給が実現するか否かは、プレイヤーの持つ要求水準の個数(単一の要求水準を持つか複数の要求水準をもつか)に大きく依存し、強完全均衡で想定するようなプレイヤー間の交渉が効率的な供給を導くか否かは、自発的参加ゲームの部分ゲーム完全均衡において効率的な公共財供給が実現するか否かに依存することも明らかとなった。
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