研究概要 |
本研究の課題は、2004年4月以降のエコノミストによる消費者物価上昇率予測値を用いて、日本のエコノミストの予測に特徴的な性質を明らかにすることである。民主党に政権が交代してからは「デフレの解消」が強く叫ばれるようになったが、人々の将来に対する予想には各種の偏りが存在する事が知られているため、政策担当者が「人々の予想にはどの様な偏りが生じる傾向があるか」を知らずに政策決定をすると、思わぬ事態を招く恐れがある。よって、エコノミストの予測の性質を分析することには、政策上重要な意義がある。 平成22年度は本研究課題の2年目として、いくつかの準備的な分析作業を行った。まず、「日本のエコノミストの予測は同質的であるか」、すなわち「いつもインフレ(あるいはデフレ)を予測するエコノミストはいるか」を分析した。さらに、「いつも予測が正確な(あるいは不正確な)エコノミストはいるか」についても分析した。日本のエコノミスト42人の18四半期分データを利用した分析結果は、どちらの設問に対しても肯定的なものとなった。すなわち、いつもインフレ(あるいはデフレ)を予測するエコノミストが存在し、さらにいつも予測が正確な(あるいは不正確な)エコノミストが存在することが明らかになった。この分析結果は、査読付き雑誌であるJournal of Forecastingに、巻頭論文として掲載された。("Testing homogeneity of Japanese CPI forecasters,"(2010) Journal of Forecasting, 29(5), August, pp.435-441)
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