私は、位置オークションの重要な現実的応用問題である、検索連動型広告オークションについて、主にゲーム理論を用いた理論的分析を進める一方で、理論を実験やコンピュータシミュレーションを用いて検証することを予定していた。より具体的には、検索エンジン側の広告枠供給戦略としての広告枠数制限について分析した。 21年度の研究成果より検索エンジンの収入を最大化させるような最適な広告枠数というものが存在することは明らかにできた。22年度の研究により、前述の結果は、「広告枠の限界収入は上位広告枠であるほど高く、下位の広告枠では限界収入がマイナスになりえる」というより一般的な原理より導けることが明らかとなった。この原理より、検索エンジンは上位広告をよりクリックされるように、下位広告をよりクリックされないようにすることにより収入を高めることが可能であることが理解できる。これより、検索エンジンがページあたりの広告数を制限することだけではなく、上位広告枠をより強調するよう検索結果画面を変更した近年の検索エンジンの動向についても理解できるまた、当該原理の応用として、売り手が自由に財を分割できるときの最適分割方法についての含意を得ることができる。広告枠数制限が収入増に寄与することはシミュレーション分析からも確認できた。 これらの研究結果については、国内、国外の学会、セミナーで報告され、理論分析の結果は論文としてまとめられ、現在国際査読雑誌へと投稿中である。
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