本研究では、日本および米国の中期的変動メカニズムを解き明かし、国民所得などのマクロ経済変数の中期的変動を分析することを主な目的としており、そのために理論モデルの構築とモデルのカリブレーション・シミュレーション分析を行う。本研究は米国と日本の二国を対象としているため、2つの国が影響しあう理論モデルの構築を目指している。そこで2011年度は2010年度までの研究を基に、一国を技術開発国、他国を技術応用国とする二国モデルを構築し、それに基づいたカリブレーション・シミュレーション分析を行った。主に以下の二点を中心に分析を行った。 第一に、2010年度に構築を開始した理論モデルを完成させた。モデルは通常の実物的景気循環モデルに内生的技術成長と技術伝播を組み込んだ2国間モデルである。具体的には、技術応用国(日本)は技術開発国(米国)で開発された先端技術を学び、自国での使用に適した形に変換させ、自国に取り入れるモデルを構築した。結果として、技術開発国(米国)の研究開発が技術開発国だけでなく技術応用国(日本)の中期的な経済変動に影響を与えることを示すモデルとなった。 第二に、米国と日本のデータを使用し、上記モデルのカリブレーション・シミュレーション分析を行った。分析によると、日本の所得を含めたマクロ変数の中期的変動は米国のR&D投資の影響を強く受けることが定量的に示され、戦後の日本の中期的変動の多くの部分が米国発の技術伝播により説明できることが示された。 景気循環モデルと内生的技術成長および技術伝播を組み合わせた景気循環(中期的変動)分析を行った研究はこれまで行われていないため、重要な貢献と考えられる。
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