本研究の主な目的は中期的な経済変動のメカニズムを解き明かし、日本および米国の国民所得や所得格差などのマクロ経済変数の中期的変動要因を明らかにすることにある。大別して二つの側面から研究を行った。第一に、本研究の大きな目的の一つは貯蓄を含む所得格差の変動メカニズムを解き明かにすることにあるので、この点に関する研究を行った。分析によると、将来に関する期待の変化が貯蓄行動に大きな影響を与え、期待される所得の上昇が貯蓄率を低下させることが分かった。第二に、本研究は米国と日本の2国を研究対象としているので、他国から影響を受けるマクロ経済モデルを構築し、理論モデルに基づくカリブレーション・シミュレーション分析を行った。分析によると、所得を含めた日本の多くのマクロ変数の中期的変動は米国のR & D投資の影響を強く受けることが定量的に明らかになった。
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