研究概要 |
1.フランク・ナイトの代表作を選定し、彼の経済思想の体系性やその自由主義的特徴、今日的示唆に富む彼独自の議論をコンパクトに紹介する論文集として高哲男九州大学名誉教授と共に訳出、『競争の倫理-フランク・ナイト論文選-』(ミネルヴァ書房,2009年5月)として刊行した。なお、この論文集には、ナイトがケインズの流動性選好説に対して展開した理論的批判だけでなく、彼自身の貨幣・金融政策論の一端までもが垣間見える重要論文「景気循環・利子および貨幣-方法論的アプローチ-」(1941年)が、第三章として収録されている。 2.フランク・ナイトの思索の多面性や重層性を「複眼的思考」として整理したうえで、彼の人生・学問遍歴などを手がかりとしてその認識論的・哲学的背景に迫った論考「フランク・ナイトの複眼-思索の多面性と重層性-」を執筆、上掲書のなかで訳者解説として発表した。 3.ナイトとケインズの間に横たわる理論的見地の相違や貨幣観の違いだけでなく、その方法論的背景や貨幣幻想をめぐる経済学史・経済思想史全般についての考察をも展開した論考「貨幣幻想がもたらす理論経済学の難題-ナイトとケインズの微妙な接点-(仮)」、および、ナイトの金融政策観の一部を紹介しながら今後の世界経済や日本経済が直面する金融問題を展望した時事論考「型口戦略の大前提-『インフレ懸念〉デフレ懸念』の基礎条件-(仮)」を執筆、今夏勁草書房より出版予定の研究書『市場・不確実性および競争の倫理-フランク・ナイトの自由企業論-』において、それぞれ「コラム(七)・(八)」として収録予定。
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