研究概要 |
1.論文「フランク・ナイトの経済学・競争体制批判-シカゴ"学派"再考-」(『経済学史研究』53巻1号,2011年7月発行予定)を執筆し、"シカゴ学派の新古典派経済学者"という従来のナイト像を崩壊させうる彼自身の政治的・経済的・倫理的議論を再構成しただけでなく、彼固有の自由主義思想の一貫性と体系性を浮き彫りにした。同時にこの論文では、ナイトを代表とするシカゴの経済学者グループが1933年にローズベルト政権に提案した金融制度改革論-シカゴ・プラン-の骨子を概説し、ナイトの高弟である後のマネタリストM.フリードマンや規制改革論者G.スティグラーらとの方法的連続性や思想的異次元性に触れるなど、"シカゴ学派の祖"というナイト像誕生の背景だけでなく、シカゴ"学派"という括り方それ自体が抱える問題点も浮かび上がらせている。 2.International Workshop on the Historical Diversity of New Liberalism : Its Social Philosophy and Economic Design(2011年3月10-11日:九州大学経済学部)において研究報告Frank Knight on Liberty and Inequality : The forging character of his critique of the free enterprise systemを行い、単なる市場擁護論や競争の倫理批判に留まらないナイトの多面的で重層的な自由企業社会分析について論じた。さらに同ワークショップに参加していたナイト研究の第一人者R.B.Emmett氏らとシカゴ学派の自由主義の特徴やナイトとの異質性をめぐる議論も行った。 3.シカゴ大学図書館Special Collection Research CenterにおいてFrank H.Knight Papersを調査し、ナイトが晩年に執筆に取り組み、ついにかなわなかったとされる幻の著作について資料の収集(720 Photocopies)を行った。
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