1.論文「フランク・ナイトの経済学・競争体制批判-シカゴ"学派"再考-」を経済学史学会の機関誌『経済学史研究』に発表、ナイトを代表とするシカゴ大学の経済学者グループが1933年に提案した金融制度改革案-シカゴ・プラン-の骨子や、ナイトの高弟である後のマネタリストM.フリードマンとの方法的連続性や思想的異次元性などについて概説し、"シカゴ学派の祖"というナイト像が誕生した背景だけでなく、新古典派や制度学派といった括り方それ自体が抱える問題点、従来の学史研究が抱える死角などを浮かび上がらせた。 2.ケインズの流動性選好説やマネタリストが主張するルールに基づく通貨管理政策、さらには超低金利政策に対してナイトが披露した懐疑的所見だけでなく、裁量的金融政策への支持までもが明記されているヴァージニア大学での講義録Intelligence and Democratic Action を訳出し(『ナイト社会哲学を語る-講義録「知性と民主的行動」-(仮)』ミネルヴァ書房より今秋刊行予定)、彼が最晩年まで取り組んだ「未刊の著作」の名残である本講義録出版の背景やその今日的意義などについて概説した訳者解説「ありし日の本の幻につかれて」を執筆した。 3.一般経済誌「週刊エコノミスト」第90巻18号(2012年4月24日号)上の「経済学者の思想と理論」をめぐるエッセイ「温経知世」欄に「フランク・ナイト-社会の不確実性を経済学に取り込んだ-」を寄稿、昨今の金融危機や想定外といったキーワードの本質を読み解く上でも通用するナイトの視点を広く紹介すべく、主著『リスク・不確実性および利潤』や主論文「競争の倫理」などのポイントや現代的意義の一端を解説した。
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