研究概要 |
今年度は、主流派の金融政策論の検討を主に理論的な面から行うとともに、実証的な検討の準備を行った。第一に、前年度に引き続き、インフレーション目標政策論及び政策ルール論に関する文献の収集とサーベイを行った。今年度は特に理論的及び政策思想的な面に留意して作業を行い、また、ポストケインジアンによる批判的検討を行っている文献も対象とした。第二に、インフレーション目標政策の実際の成果を検討している実証的な文献のサーベイを行った。これは、簡単な実証分析を行うための準備作業でもある。また、前年度に引き続き、計量分析の手法に関しても、その習得に努めた。第三に、インフレーション目標政策の成果を検討するために、主要な導入国と比較対象の非導入国の基本的なマクロ経済データの収集と予備的な検討を行った。この点に関しては、IFS Onlineを導入し、作業を行っている。第四に、インフレーション目標政策論をポストケインジアン的な視点から批判するために、ケインズの「金利生活者の安楽死」論に注目し、経済思想的にその内容とケインズにおける議論の発展を検討した。以上のような作業を踏まえ、第一に、インフレーション目標政策論を金融化及び所得分配の観点から検討する内容の原稿を作成し、"Inflation targeting income distribution,and financialization"と「インフレーション目標政策論の批判的検討:金融化と所得分配」という題で、International Conference on Production and Distributionと経済理論学会第58回大会において、それぞれ、報告を行った。第二に、報告後、改訂稿を作成した。これは、『金融と所得分配』(日本経済評論社)の第9章「インフレーション目標政策の批判的検討」として2011年10月に刊行予定となっている。
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