研究概要 |
今年度は主流派の金融政策論の検討を理論面だけでなく、その政策が与えうる影響及び現実の経済状況との関係を含めて総合的に行った。第一に、主流派の金融政策論の背景となり得る現象として、金融化に関する議論のサーベイを行った。今年度は特に金融化の進展が金融政策に与える影響を中心に検討した。第二に、ケインズの金利生活者の安楽死論の検討を行い、経済思想史的にその形成過程を検討するだけでなく、現代的な意義も考察した。第四に、内生的貨幣供給論において、金融の位置付けを考察した。成果としては、第一に、インフレーション目標政策論を金融化及び所得分配の観点から検討する内容の論文を作成した。これは『金融と所得分配』(渡辺和則編、日本経済評論社)の第9章「インフレーション目標政策の批判的検討」として2011年12月に刊行された。第二に、ケインズの金利生活者の安楽死論を検討する内容の原稿を作成し、'Return of the rentier:Keynes's theory of "the euthanasia of the rentier" revisited'と「ケインズの「金利生活者の安楽死」論再考」という題で、International Conference on Money,Financeand Ricardoとケインズ学会第1回大会において、それぞれ報告を行った。第三に、内生的貨幣供給論における金融の位置付けをリーマン・ショック以降の金融危機と関連付けて論じる内容の原稿を作成した。これは『グローバル・クライシス」ポスト・ケインズ派の経済分析-』(青山社)所収の「金融主導型レジームの限界とグローバル・クライシス」として2012年9月に刊行予定となっている。第四に、『内生的貨幣供給理論の再構築-ポストケインズ派の貨幣・信用アプローチ』(日本経済評論社)を2011年5月に刊行した。これは内生的貨幣供給論の理論を中心に扱っているが、内生的貨幣供給論における金融政策に関しても若干論じている。
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