実現ボラティリティをモデル化することで、ボラティリティの予測に役立てることができる。その際、さまざまなモデルの予測力を比較するのに使われるのが、Mincer-Zarnowits (MZ)回帰式である。これは、真の値を被説明変数、予測値を説明変数として、回帰分析を行い、その決定係数の大きさで比較を行う方法である。 これまでの研究では、実現ボラティリティを真の値と見なし、MZ回帰式により、モデルの予測力が評価されてきた。しかし、実現ボラティリティは、真のボラティリティの推定値にすぎない。したがって、真の値と推定値の誤差が大きければ、決定係数の値も変わってくると考えられる。この問題意識から、Andersen.Bollerslev/Meddahi (2005)は、決定係数を修正する方法を考案した。 平成21年度は、誤差が真のボラティリティと相関がある場合、Andersen/Bollerslev/Meddahi (2005)のアプローチの問題点を指摘し、予測評価の修正方法を考案した。さらに、予備的な実証分析を行い、シミュレーション分析の枠組みを検討した。 平成22年度前半は、前年度に検討した枠組みをもとに、実現ボラティリティ(RV)の誤差に関してモンテカルロ実験を行った。その結果、次の3点が明らかになった。(1)小さな誤差であっても、モデルの推定にはバイアスが生じる。(2)RVの一致推定量が使用された場合、ボラティリティの一期先予測値への影響はほとんどない。(3)Andersen/Bollerslev/Meddahi (2005)による決定係数の修正では不十分で、さらなる修正が必要である。また実験により、この研究で提案した修正方法の効果も検証できた。平成22年度後半には、S&P 500株価指数のRVのデータを使って実証分析を行った。実証分析からも、決定係数の新たな修正方法が効果的であることが確かめられた。
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