研究概要 |
平成23年度の主な成果は次の通りである。 (1)特許ゲームにおける解概念の漸近的性質に関する論文(Kishimoto, Watanabe, and Muto 2011)が査読付き国際専門誌Mathematical Social Sciencesから刊行された。(2)企業数が有限である場合の交渉解と特許権者の利得を最大にするライセンス数に関する考察(Kishimoto and Watanabe, 2012)を論文に纏めた。(3)入札や交渉によるライセンスの定性的性質を調べるための被験者実験を実施した。 (1)は前年度までの研究成果である。(2)では、解概念としてカーネルを用いた。特許ゲームのカーネルが一点集合になることが証明され、それにより、特許権者の利得を最大にするライセンス数を導出することが可能になった。これまでの研究では、解概念として交渉集合を用いてきた。交渉集合はカーネルを含む交渉妥結点の集合であるが、必ずしも一点集合にはならないため、より複雑な分析対象であるパテントプールにおける利得配分問題に対する分析結果が不明確になっていた。(2)の結果により、パテントプールの分析において明確な結果を導出できる可能性が高まった。(3)では、特許ゲームの分析における技術入札や交渉を取り扱い、それらの仕組みの効率性に関する知見を得た。 現在進行中であるが、特許ゲームの解概念を安定集合とした時の分析結果が纏まりつつある(Hirai and Watanabe,2012)。まだ電子ファイルとしても公開はしていないが、結果は非常に一般的であり、その非空性が確認されたばかりでなく、他の交渉解と同じく、非協力ゲームに基づくメカニズムが導く結果に漸近する。
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