本研究の目的は、どのような要因が入札者間の競争を促進するのかを明らかにするため、日本の公共建設工事の入札データを用いて、入札および落札価格の決定要因を実証的に分析することであったが、平成21年度は、この分析にとって最も重要でデータセットの構築に主に力を注いだ。入札および落札価格を決定する要因として、企業の財務構造などの入札参加者の特性に加えて、入札参加者数や新規参入企業の有無のような各入札案件の特性の影響を明らかにするため、地方公共団体がウェブ上で公開している入札価格や落札価格に加えて、入札企業の住所やその他の特性を含む入札関連のデータの収集を行った。これらの作業により、平成22年度の最終的な研究成果の発信に向けて計画通りに順調な研究活動が行われた。 また、入札談合に関連する独占禁止法の審判決に関連する研究を行ってきた。平成21年度は、日本の独占禁止法審判決に関する入札談合の事例として福岡市造園事件を取り上げ、経済学的視点からの分析に加えて、制度・法律的な視点から入札談合について分析をおこなってきた。これらの成果は、「入札談合と基本合意-福岡市造園事件-」というタイトルにて事例分析の論文を発表し、様々な事例を集めて共同執筆によって書籍「独占禁止法の経済学」を出版した。さらに、当研究に関連する分野においていくつかの学術論文を国際的学術雑誌やディスカッション・ペーパーシリーズにおいて発表した。同時に、学会や研究会などで多くの成果を発信してきた。
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