本研究では、医療技術の進歩に対するアクセスをいかに担保すべきかについて、「リスク」と「費用」の観点から経済学的な研究を行った。特に新薬・新技術の利用に関する「リスク許容度およびリスクの認識」と「支払い意思」について定量的に明らかにする。加えてどのような個人属性が、新しい医療技術へのアクセスを選択する際に影響を及ぼすかについても明らかにする。まずは医療技術を生み出すことからそれにアクセスするまでの過程を考察するとともに、具体的にどのような問題があるのか文献サーベイを行った。続いて新しい医療技術へのアクセスにおける「リスク」と「費用」の定量化にあたっては、独自のアンケート調査を実施したうえで、仮想的市場法を用いた選択実験を行った。この調査では個人の基本属性の他、健康状態や既往症、リスク認知度などについて質問するとともに、いくつかの医療技術(花粉症ワクチン、新しい抗がん剤、子宮頸がんワクチン)の利用を想定した選択実験を行った。具体的には仮想的市場法に基づく選択実験を行い、新しい医療技術を選択する際に、どのような要素を重視するのかを条件付ロジットモデルにて実証的に分析した。また新しい医療技術をいかに生み出すかについて、研究開発側に立った考察も行った。
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