本研究課題の目的は、障害児・者の医療・福祉サービスの利用とその影響に関する計量分析を通じて政策的インプリケーションを示すことである。大きく以下の三つの分析を予定している。 第一に、障害児に着目し、特別支援学校を対象とするアンケート調査から、児童・生徒の医療・福祉サービスの利用や世帯の経済状況などが児童・生徒の就学状況や卒業後の進路選択・就労に与える影響を検証する。また、就学奨励費の受給申請手続きの状況や、特別児童扶養手当が世帯の総所得に与える影響、保護者の就業状態から、世帯の貧困状況なども分析する。第二に、障害者の利用する社会福祉関係の施設を対象とするアンケート調査を実施し、障害福祉サービスの供給体制や実際に供給される障害福祉サービスの質を定量的に把握する。具体的には、グループホームやケアホームを分析対象として考えている。第三に、公表されているマクロデータから障害者の求職活動やン就労状況を分析する。 平成21年度は、特別支援学校を対象とするアンケート調査とマクロデータを用いた就職率の分析に着手した。前者については、実態にそくした調査票を使用するため、まず、保護者に対する聞き取り調査を行った。後者については、新卒市場に着目し、『学校基本調査』『特別支援教育資料』『特殊教育資料』の高等部の卒業生の就職率データや他の統計資料のマクロデータから、労働需要関数と労働供給関数の推定を行った。推定結果は、学会や研究会などで報告している段階である。
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