研究概要 |
本研究課題の目的は、障害児・者の医療・福祉サービスの利用とその影響を計量分析で明らかにし、政策的インプリケーションを示すことである。 平成23年度は、長期疾病患者と発達障害者に着目した。 難病・長期慢性疾病患者は、疾患から生じる生活機能不全や生活機能低下によって、実質的には身体障害者と同様の問題を抱えていながらも、既存の医療制度や福祉制度でのカバーが不十分である。障がい者制度改革推進会議等においても、難病・長期慢性疾病患者も含めた「障害」の定義の必要性や、それに合わせた制度改革の重要性が指摘されている。 そのため、本研究課題では長期疾病患者のうちの慢性骨髄性白血病患者に着目し、「慢性骨髄性白血病患者実態調査」の個票データを使用して、医療費負担や就労の難しさなどを分析した。分析結果は平成23年7月のInternational Health Economic AssociationのWorld Congressで報告したほか、論文の一部は査読雑誌への掲載が決まっている(Kodama, Y., Morozumi, R., et al. "Increased financial burden among patients with chronic myelogenous leukaemia receiving imatinib in Japan: a retrospective survey, "BMC Cancer)。 また、発達障害者については、とやま発達障がい親の会が実施した「発達障がい児の親支援に対する調査」の個票データを使用して、発達障害者に対する社会的障壁の大きさを計測した。地域のコミュニティにおける人々の相互理解や助け合いは、ソーシャルキャピタルの一種として、近年重視されている。地域社会のメンバーによる障害者への理解もまた、そのうちの一部であると言える。そこで本研究では、マクロ統計からは把握することができない地域住民や医療従事者・福祉従事者の障害者やその家族への理解・協調性を分析した。分析結果は学術論文にまとめ、現在、査読雑誌に投稿中である。
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