研究概要 |
本研究では,多様な企業間の相互依存関係と対面接触に要する交通の時間的費用の観点から,マイクロ・データに基づいて都市集積のメカニズムを明らかにし,集積のメリットを定量化することが目的である.21年度は多様な企業間の相互依存関係と対面接触に要する時間費用を計測するために,一般道路交通ネットワークにおける交通密度と速度の関係性を推定した.車両の交通密度と速度の関係性を表す古典的モデルの再現は,同一路線,同一時間帯による分析がほとんどである.本研究では都市全体を包含する集計データを利用し,かつ交通流の空間ネットワーク性を考慮した推定モデルの開発を行っている.さまざまな路線の個別性を回避するために,3つの時間帯における固定効果でこれを吸収し,かつパネルデータにおける空間自己相関を考慮した.Kelejian and Prucha (1999)における空間自己回帰パラメタの積率推定を多時点に渡るモデルに応用して,推定量の有効性を高めた.また,固定効果を推定することで,除外変数バイアスを回避し,集計データによる分析精度を高めることに成功した.固定効果は個体効果,時間効果および部分時間効果の3方向で推定し,この3つを含む場合,もっとも統計的パフォーマンスが優れていることをさまざまな仮説検定で立証した.本研究はこれをworking paperとして発表した(The Speed-Density Relationship : Road Traffic Flow Analysis with Spatial Panel Data, University of Toyama, Working Paper No.246,2009年11月).
|