研究概要 |
今年度は関連論文がいくつか結実した。実績として、世界的にトップクラスの学術誌であるJournal of International Economicsで採択,European Economic Reviewでほぼ採択されている状況である。2本共に企業が異質なもとでどのように企業立地を決めるか、これにより、貿易パターンや平均生産性、企業の貿易行動にどう影響するかを理論的に研究した。日本の産業空洞化や貿易政策も示唆する研究内容になっている。さらにこれらの理論の拡張と日本の企業レベルのデータを使って実証し、様々な問題の解決へ果敢に挑戦した。主な研究成果として(1)Cole et al. (2010, RIETI DP)では企業データを用いて、環境アウトソーシングを研究した。規模が大きく、汚染集約的な企業ほど海外へ生産委託(アウトソーシング)しやすいことが分かった。(2)Forslid and Okubo (2010, RIETI DP)では企業の生産性による立地パターンと資本集約度の関係を企業の異質性を考慮した空間経済理論と実証から研究した。多くの産業では企業の生産性と産業の資本集約度でもって空間的に企業立地でソーティング(すみ分け)が起こっていることが分かった。資本集約的な産業ほど、生産性の高い企業のみならず低い企業が都市部に集中することが分かった。(3)Forslid and Okubo (2011, RIETI DP)では輸出行動と資本集約度に関して研究した。異質性を考慮した貿易理論を拡張し、産業間の資本集約度や輸送費などでの異質性、さらに輸送費の規模の経済を考慮してモデルを作った。カリブレーション推計し、モデルとして妥当なことが証明された。結果、資本集約度が高いからといって必ずしも輸出が多いとも限らず、輸送費の規模の経済と資本集約度との関係により、状況が変わり、輸送インフラの政策による整備の重要性が示された。(4)昨年度に引き続き、企業・事業所データ生成し、企業立地と貿易の研究を継続している。
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