研究初年度である平成21年度は、計画通り8月にミャンマーで現地調査を実施した。現地政府機関の都合により調査許可の手続きが遅延したため、予定をやや短縮して約3週間の調査期間となったが、現地調査の内容(家計調査と関連諸機関での調査)は概ね当初の計画通り遂行することができた。家計調査は主に、内陸部貧困地帯のチャウンウー(ザガイン管区)で実施した。過去の調査データを考慮して同一の村落・世帯をカバーしつつ、それ以外の村落の世帯も対象に含めてインタビューを行った。いずれの世帯もマイクロファイナンス事業やその類似事業の参加世帯(借り手)である。これらの村落では平成23年度にまた家計調査を行う予定であり、そのためには詳細な情報収集が必要と判断して、今回の調査対象はやや少なめ(50世帯)とした。また、家計調査を実施する前の予備調査の時点で、マイクロファイナンスの借り手の一部が流動的であるようであったため、新規に参加した村人ややめた村人を対象に参入理由や退出理由などについての聴き取りも実施した。研究初年度の現地調査では、詳細な家計調査データの収集とともに村人の利用実態の把握を目指していたため、村人の多様な利用事例を把握できたことは特に有意義であった。関連機関での調査では、チャウンウーの他に首都ネーピードーやヤンゴン、チャウッパダウン(マンダレー管区)において、政府機関(農業灌漑省や農業公社)や国連機関(UNDPミャンマー)の本部や支店、国際NGOの支店や地方事務所を訪問してインタビューや資料収集を行った。帰国後は、それらの調査で収集したデータを入力、整理する作業を行った。特に家計調査で入手したデータには質的なデータも含まれるため、分析のための加工がしやすいように工夫しながら作業を行った。これらのデータに基づく分析結果の一部は、すでに執筆を終えた状況にあり、2010年度内に発表する予定である。
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