研究課題
平成 24 年度は、Japan and the World Economy 誌に掲載された本研究計画の成果を更に掘り下げることを中心に活動した。現時点ではまだ論文としてまとめられる段階ではないが、検討課題の絞り込みや、それに対する具体的なアプローチについて、一定の目途が立った。前年度までで明らかになったのは、摘発のリスクが高いにもかかわらず、現実の入札談合ではシンプルなメカニズムによって落札者を決定していた事例が多いということであった。本年度は、参加者が多いという日本の入札談合の特徴も考慮に入れた上で、その理由を明らかにすることを試みた。本研究計画にて作成したデータベース及び個々のケーススタディなどを再度検討して得た仮説は、多数の参加者から構成される談合組織は信頼関係の構築に関して強い制約を受けているのではないかというものである。談合組織内で公平に落札機会が与えられているという認識がなければ談合は成立しないと思われるが、この制約が我々が思っていた以上に厳しいのではないかということである。参加者が理解できないような複雑なメカニズムでは、たとえ摘発のリスクを低くできたとしても、参加者全員から信頼を得ることは難しい。しかしながら、この立場を取ると、参加者の認識力を考慮した談合メカニズムの分析を追加する必要がある。その際に有効なアプローチについても検討した。現時点で有力なのは、行動経済学に基づいた分析である。既に欧米の一部の研究者が産業組織論の分野に行動経済学の知見を応用し始めているが、そうした先行研究を参考に、本研究への応用の可能性を現在も調査している。まだ最終的な結論ではないが、応用できる可能性は高いというのが現時点での結論である。現実の入札談合のメカニズムを統一的に説明できれば、その競争政策的意義は大きいため、今後も研究を継続していくつもりである。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Institutional and Theoretical Economics JITE
巻: Vol. 168, No.4 ページ: 712-730